転職コラム
2022/04/25

監査法人 –ワークライフバランス

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多忙というイメージの監査法人。「実際はどのくらい忙しいの?」「長期的に働けるのかな?」「家族との時間は取れるのだろうか?」と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、このような疑問にお答えしようと思い、「監査法人のワークライフバランス」について記事にすることにしました。

改めまして、公認会計士の近衛(このえ)と申します。初めての方はプロフィール、過去の記事はぜひこちらをご覧ください。

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私は2014年から2020年まで、日本の監査法人で働いておりました。監査業務のなかで、四半期レビューや期末監査を数年経験しており、2-3名体制の監査チームから30-40名のチームまで幅広く経験することができました。また、入所してすぐに子供が産まれたことでライフスタイルが大きく変化し、仕事とプライベートとの両立も意識するようになりました。今回はそのような私の経験や元同僚から教えて頂いた情報をもとに、「監査法人のリアルなワークライフバランス」について、皆さんにご紹介したいと思います。

今回の前提として、日本にある監査法人(監査チーム)への転職を検討されている方を想定しています。

監査の年間スケジュール

3月末決算の上場会社を前提とすると、監査チームの1年間の予定はこのようになります。

4月―6月:繁忙期

クライアントが4月1週目―2週目あたりで年度末決算を締めると、いよいよ我々の監査がスタートします。いわゆる監査チームの繁忙期と呼ばれる期間に突入です。ご存じの方も多いと思いますが、クライアントが短信や会社法の計算書類、有価証券報告書を公表する日付は予め決まっているため、これらの期日までに監査を終える必要があります。そのため、繁忙期は特に時間に追われながら忙しく業務を行っており、勤務時間は早朝から深夜まで続くことも多いのがこの3か月の特徴になります。5月は日本のほとんどの企業がゴールデンウィークで連休である中、監査法人はほぼ毎日休みなく働いていることが多いと思います。そして6月に有価証券報告書が提出されると、繁忙期はようやく終わりを迎えます。

私が在籍していた頃のピーク時の残業時間は週末も合わせると40時間/週でした。現在、監査法人でマネージャーとして働いている知り合いからも約40時間と伺いましたので、今でも繁忙期の労働時間は長いようです。※コンプライアンスに従って、残業時間が長くなりすぎないようにチームごとに時間管理が徹底されています。

7月―9月:休暇を取りやすい時期

繁忙期が明けると、第一四半期レビューの作業に入りますが、年度末監査の業務量よりは少ないため、この時期に休暇をとる人が多いです。特に8月は夏季休業を設定している監査法人もありますので、夏季休業の前後で有給休暇を入れることで、2週間以上の休みにしている方もいらっしゃいました。

私もこの時期になると、毎年3週間くらいの長めの休みを取得していました。この長期休暇を利用して、海外旅行に出掛けたり、帰省したりしていました。監査法人は繁忙期こそ長時間労働になりますが、それ以外では比較的、連続した休みを取りやすい環境だったと思います。ほかのチームメンバーも自由に休みを取っていました。自分の予定に合わせて休んだり、連続で休暇を取ったりしても、気を使うことや抵抗を感じることはありませんでした。

10月―12月:徐々に忙しくなる時期

休暇が終わると、第二四半期レビューが始まります。第一四半期レビューと同様に年度末監査の業務量よりは少ないのですが、内部統制監査の作業も始まる監査チームが多いと思います。そのため、繁忙期ほどではないものの、労働時間が徐々に増えてくる時期です。ただしクリスマスから年末年始にかけては、夏季休暇に次いで休みの取りやすい時期になります。

1-3月:外資系クライアントの繁忙期

年が明けると第三四半期レビューの時期になりますが、同時に年度末監査に向けた作業も始まります。また、私のように日系企業以外に外資系企業も担当している場合には、12月決算の監査がスタートして繁忙期に入ります。特にUSCPAの資格をお持ちの方は、米国会計基準、PCAOB監査を担当することが多いと思います。アメリカにある親会社に合わせて、日本法人も12月決算としているクライアントが多いため、1-3月がUSCPAの繁忙期とお考え頂いてもよいかと思います。※私の米国系クライアントは12月決算の他、1月決算の日本法人もありましたので、クライアントによって異なります。

このように、日系企業と外資系企業の両方を担当する場合には、それぞれの決算期が異なることにより、おおむね1月から6月まで繁忙期が続くことになりますので、アサインの希望などを相談する場合にはあらかじめ頭に入れておいた方が良いでしょう。一方で、日本基準と米国基準の監査を両方経験できるチャンスでもあります。今後のキャリアも考えながらアサインの希望を出されると良いでしょう。

残業時間

以上の通り、監査法人の繁忙期には夜遅くまで仕事が続いたり、監査報告書の提出日が近づいてくると週末も稼働せざるを得ない状況になるのが実情です。一方で、繁忙期が終わるとあまり残業もなく、定時に帰宅する時期もあります。一般的に「いつも多忙」と思われがちな監査法人ですが、実態としては、仕事に集中する時期と休む時期がはっきりしており、非常にメリハリのある1年間を過ごしているという印象でした。

予定が立てやすい!?

例えば、監査ではなくアドバイザリー業務やコンサルティング業務の場合は、案件を受注できたタイミングでプロジェクトが始まって繁忙期になりますので、年間の予定は立てにくいでしょう。監査の年間スケジュールでご紹介した通り、クライアントの決算期が分かればどの月にどのような業務が行われているのかが予想できます。これは監査報告書日から逆算するように年間計画が作られているからです。もちろん予定外のことも起こりますが、おおよそいつどのような仕事をしているのかが分かるため、プライベートの予定を立てやすいのではないでしょうか。

育児との両立

監査法人で働いている元同僚(監査マネージャー)に聞いたところ、育児との両立はしやすい環境のようです。理由としては、クライアント対応や調書作成をしっかりしていれば、働く時間はフレキシブルにできるということのようです。また、コロナの影響でリモートワークが中心となり、出社する必要がなければ自宅で働ける環境であるという点も、ポジティブな要因でした。

また、他の同僚に伺ったところ、育児や家庭の都合により、東京から地方に引っ越した人もいらっしゃいました。特に、子供が産まれたばかりなので自分の親と近い場所に住みたい、東京ではなく地方で子供を育てたいなど理由は様々ですが、引っ越した後も東京の事務所に籍をおいて、これまでと何も変わらずに仕事を続けているそうです。こちらも、リモートワークとなった影響で、遠方からでも働ける環境になった実例だと思います。

実は私が2014年に監査法人に入所したタイミングで最初の子供が産まれました。入所が2月でしたので、産まれて間もなく最初の繁忙期に入り、どのように仕事と育児を両立していくか少し戸惑いもありました。しかし、残業は自宅で作業させて頂いたり、子供が風邪で熱を出してしまった時も自宅勤務させて頂くことができました。監査は、一部の業務(棚卸の立ち合いなど)を除くとPCさえあれば場所を問わず、仕事を進めることができますし、法人も様々なツールのデジタル化を進めていますので、リモートワークに馴染むのだと思います。

まとめ

以下が監査法人のワークライフバランスを理解するためのポイントです。
1.年度末決算の繁忙期は労働時間が長くなるが、それ以外はまとまった休みを取りやすい
2.年間の業務計画が見通しやすいため、プライベートの予定が立てやすい
3. 働き方、住む場所などがフレキシブルに対応できるため、育児との両立がしやすい

いかがでしたでしょうか。今回はワークライフバランスについてご紹介しました。

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Profile

近衛祐哉(このえ・ゆうや)
公認会計士、MBA(University of Southern California)

2008年筑波大学卒業。銀行で勤務した後、公認会計士試験合格。監査法人にて総合商社や外資系企業の監査に従事した後、ロンドン駐在。帰任後はロサンゼルスにMBA留学し、卒業後はシリコンバレーにある監査法人にてテクノロジー企業のIPO/SPACやM&Aにおける会計アドバイザリー、財務デューデリジェンスなどに従事している。

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